読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

いんたーねっと日記

141文字以上のものを書くところ

ダンスフロア合法化運動とかクラブカルチャーについて

おことわり:当初はタイトルを「ダンス合法化運動とかクラブカルチャーについて」としていましたが、現時点で法による規制を受けているのはダンス自体ではなくダンスをする施設なので、「ダンスフロア合法化運動とかクラブカルチャーについて」に変更しました(2012年6月2日 午前6時)

以前から風営法のダンスホールに関する条項について撤廃を求める署名活動があったり、選挙のたびに候補者に公開質問状をおくるなどの運動はあったのだけど、やはり坂本龍一なんていうビッグネームが動くと一気に話題になるんだなと思った。トーフビーツのフリーダウンロード曲も話題になっているし、やっと「もしかしたらやっとクラブを取り巻く状況も変化するのかもしれない」と少しだけ思えるようになってきた。

その一方で、やっぱりクラブカルチャー側の人間も、全く興味のないような人間も、どこかこの問題について認識が一致してないところがあって、そこが気になっている。自分の中で考えを整理する目的も含めて、しっかりとまとめておきたい。

最初にクラブカルチャー自体や現在おかれている状況について(クラブに行かない人にもなるべくわかりやすくなるように)説明して、最後に自分の意見を書きます。

Club OTO, 15 years birthday, Capsule dj set 1
Photo : dat

そもそも「クラブ」とは?「ダンス」とは?

クラブに全く興味がない人と風営法について会話してみた。

このTogetterを読んでいて思ったのだけど、クラブに行かない人にとってはクラブで行われている「ダンス」がどんなものなのか、あまりピンときてないように思う(「披露」ということばが出てきてそう確信した)。ある人はマイケル・ジャクソンのステージのバックダンサーのように、振り付けがあってピシっとキレのあるかっこいいものを想像するかもしれないし、ある人は在りし日のジュリアナ東京や映画のサタデー・ナイト・フィーバーのように、きらびやかな衣装で踊り狂うものを想像するかもしれない。

そもそもクラブで流れている音楽はゆったりとしたリズムのレゲエやR&Bから、急なテンポのガバ、ブレイクコアといった音楽まで様々なので一概には言えないのだけど、クラブに行かない人に多くの客の雰囲気を伝えるとすれば「ロックのコンサートに集まった若者の動きとだいたい同じ」でいいような気がする。もちろん、複雑なステップを踏む人もいるし、中にはいわゆるブレイクダンス(逆立ちみたいな姿勢でくるくる回ったりする)の動きをする人だっているしそういうイベントも存在するのだけど、多くの人はリズムにあわせて身体を揺らす・手を振る・手拍子を打つ以上のことはしていない。身体をほとんど動かさず音楽を聴いているだけの人だってたくさんいる。

クラブの魅力は、家では出せないような大きな音で音楽を聴けること、それを友達やたまたま居合わせた人たちと一緒に(お酒なんかも飲みながら)楽しめること、というのが大きい。そしてこれはクラブに行かない人にとってはなかなか理解できないことだと思う。

法律と、今のクラブが使っている抜け穴について

今回問題になっているのは「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」で、正式名称では長すぎるのでここからは「風営法」と書く。

客にダンスをさせる施設は、この法律の第二条の三に相当することになっている(ここから、風営法に従った営業を三号営業と呼んだりする)。

ナイトクラブその他設備を設けて客にダンスをさせ、かつ、客に飲食をさせる営業(第一号に該当する営業を除く。)

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律

ナイトクラブが規制の対象として明文化されたのは1959年で、その後1984年の大改定時には深夜の営業も規制された。BPM Presidents featuring TINNIE PUNXの楽曲「Hoo! Ei! Ho!」には当時の雰囲気がよく現れている。

風営法は今世紀最後の禁酒法ってことさ
本気で守っちゃ損する 馬鹿だよそんなの
見つからなきゃいいんだから 、絶対
風営法は単なる嫌がらせに決まってるんだから
本気で怒っちゃ損するドアだけ閉めときゃ
 バレないさ、バレないさ、HOO!!

(映像はYOU THE ROCK★によるカバー楽曲「Hoo! Ei! Ho! '98」)

この頃は「クラブ」という呼び方はあまり一般的でなく、「ディスコ」が中心だった。風営法改定後も90年代前半にはマハラジャやジュリアナ東京のような大きいディスコが流行っていた時期もあった。しかし流行の変化から、「クラブ」へと主流が移っていく。「クラブ」は小さな店舗が多く、特定のジャンルの音楽を深く掘り下げたイベントを行い、常連客からの収益を中心とした営業ができた。

日本でいう「クラブ」とは、風俗営業の認可をとらず、飲食店として営業している店舗を指している。風俗営業としてしまうと、内装や機材などを許可無く変更できなくなるし、なによりも午前0時(地域によっては午前1時)を過ぎての営業ができなくなってしまう。そもそも、面積の小さい店舗は申請ができない。音楽が聴ける飲食店というかたちであればこういった制限を受けることがなく自由に営業することができた。

こういった飲食店の店内はDJブースとバーカウンターと少数のテーブルがあるだけで、大部分の床はダンスフロアとして機能する。もちろん、これだけでも風営法のナイトクラブの規定にはひっかかってしまうので違法なのではあるが、1984年の風営法改定時の付帯決議の存在もあって、事実上黙認されてきたと言える。

ところがここ数年、特に関西圏においてクラブの取り締まりが厳しくなり、しかも多くの店が深夜のイベント中に突然警察が来て営業停止、という状況になっていて問題視されている。この動きは全国に広がっていて、先日は福岡のO/Dで電気グルーヴのメンバーとして有名な石野卓球のプレイ中に警察が来て営業中止になった。取り締まりが厳しくなった地域では、風営法の許可を申請しようにもさまざまな理由でそれをすることができず、取り締まられる前にクラブとしての設備を撤去したり閉店したりする店舗も多く出ている。

そうした中で、今回坂本龍一氏らが呼びかけ人となって、大規模な署名運動が始まったというのが現状だ。

クラブカルチャーは「健全」になれるのか

前置きのつもりで書いていたら長くなってしまったけれども、ここからは僕の考えを書きます。

 以前からも、そして今回も「日本のクラブはどこにいってもいい人ばかりで安全で健全な文化」というようなことを言っている人がいるのだけど、それは少し暗い面に目をつぶりすぎだと思う。残念ながらクラブのような場で薬物が出回っていたりする事例は多々あるだろうし、クラブ自体の騒音問題があったり近隣に迷惑をかける客がいたりするのもすべて事実だろう。

幸いにも僕はクラブで危ない目にあったことがないのだけど、それだけでクラブカルチャーがすべて健全だと言えるとは思えない。そもそもダンスミュージックの文化の発展のそばにはいつも薬物の影があって、アシッドとかサイケデリックなんていうのはドラッグ用語だし、レゲエはその背景となる思想の根底に大麻の存在があるしで、そういった歴史や、実際に治安の悪化の要因となっている現実、薬物所持で逮捕された人たちがクラブで入手したと供述しているといったようなことを完全に無視して「僕たちは健全に音楽を愛しています!だからダンスを合法化してください!」というのは虫が良すぎる。社会からのクラブカルチャーへの印象は当事者たちが思っている以上に悪い。

では、非合法のままでいいかといえば、僕はそうとも思わない。ほとんどの店では店側も客も健全に音楽やダンスを楽しんでいると信じているけれども、それでも中にはいわゆる「犯罪の温床」となっている店舗も存在していておかしくない。。このままダンスフロアが非合法でありつづければ、よりクラブカルチャーは地下化していくだろう。そういった中でクラブの「犯罪の温床」化はより深刻化していくことは十分予想できる。店側が違法なダンスフロア営業を摘発されたくない状況で、店内での犯罪行為を防ぐことができるとは、僕は思えない。

だからこそ、僕は警察官が堂々とクラブに入れるようにするためにも、ダンスフロアの設置が合法になったほうがいいと思っている。悪いのは深夜に酒を飲みながらダンスをすることでも客を踊らせることでもなく、犯罪行為のはずだ。堂々と合法的に運営されているクラブで、不法行為があればちゃんと取り締まれるようになれば、安心してクラブで遊ぶこともできるし、近隣住民も安心できるだろう。

もちろん、合法になったクラブでの逮捕者が一人も出ないことを僕は願っている。

午前3時、クラブにパトロールをしにきた警察官の帰りを、踊り疲れてドアの近くで水を飲んでいた若者が笑顔で見送る、そういうクラブカルチャーになっていてほしい。

追記(2012年6月2日 午前6時)

言葉が足りなかったところと、言い足りないなと思ったところを追記します。

まず「ダンス」の動きについてですが、「ロックのコンサートに集まった若者の動きとだいたい同じ」という表現でもわかりにくいかもしれない、と知り合いに言われました。はてなブックマークでのコメントでも「そんなに疲れるわけがない」というような意見を頂いています。このあたりは実際に体験してみないと肌感覚としては難しいかもしれません。

もしわかりにくいと思った方は、上に貼った「朝が来るまで終わる事のないダンスを」を聞きながら、膝を軽く動かしてみるといいかもしれません(自宅で踊るぶんには法規制を受けないと思うのですが騒音や振動には気をつけてください!)。この曲はBPM124(1分間の拍の数が124)のゆったりめの曲ですが、低いドラムの「ズン」の音にあわせて膝を軽く曲げ、そのすぐ後のハイハットの「チャ」の音で膝を伸ばす(この曲では少しわかりづらいかもしれませんが)、この動きを1曲ぶんやるだけでも結構な運動になります。DJは曲と曲の間をノンストップでつなぎますし、多くの人はもう少し激しく動くので、オールナイトのイベントに朝までいるとかなり疲れて家に帰ると昼過ぎまで寝ないとキツい状態になります。

なによりも大事なのは、クラブでの多くの人の「ダンス」は、社交ダンスのようにパートナーとのコミュニケーションのためのものでも、ステージの上での人に見せるためのものでもなく、自分が音楽を楽しむためのものであるということです。スピーカーから爆音で流れる音楽に身を任せて全身で音楽を感じているだけで、「ダンス」をしているということになって、規制対象となってしまうことが今回問題とされていることのひとつなのです。

大阪のNOONというクラブは、客がこういった「ダンス」をしていることを理由に、22時前にもかかわらず摘発されました。坂本龍一氏が呼びかけている運動で風営法から「ダンス」に関する条項を削除しようと主張しているのは、深夜営業のためだけではなく、第一にこういった「ダンス」を客がしているだけで摘発されてしまう不自由さの改善のためというふうに読み取れます。

それからクラブの時間規制について。今回の記事はクラブに行かない人にもわかりやすくなるように意識して書いていて、その中でどうしても「なぜ深夜でないといけないのか」という疑問に「クラブに行かないとわからない」以外の答えが見つからなかったので、あえて外して書きました。記事に対する反応にはやっぱりその点についての疑問がみられました。自分の感覚では、深夜のイベントと昼や夕方のイベントではどうしても雰囲気が違ってくるし、全時間帯をとおしてクラブイベントがいちばん盛り上がるのは午前0時過ぎから午前3時ごろだと思っています。

深夜にクラブの外で騒いだり、周辺にたむろしたり、店舗から騒音が漏れてしまうのはやはり問題でしょう。とはいえ、そういった点で周囲に迷惑をかけなければ、深夜に人が集まることに関しては許してもらいたいものです。いま営業されているクラブの経営者の方々は、このあたりで周辺の住民の方々の理解を得るためにかなり努力されているらしいです。店内にこういった内容の注意書きが貼られている場合も多々あります。

そして警察のこと。僕は「クラブに警察を入れろ」とか「警察に監視されてクラブイベントをやれ」とか言いたいわけではありません。クラブイベントに警察が来るのはやっぱり嫌だし、特に警察が来たというだけで音が止まるのだけは絶対に阻止したい。

ただ、合法化するというのは、多少の不自由を受け入れざるをえないということだと思っています。だからこそ、警察が来たけど誰も踊るのをやめないし、中を見回しても誰もドラッグなんかやっていない、仕方がないから警察は手ぶらで帰らざるをえない、という状態を僕は目指したいのです。「笑顔で〜」というのはそういう趣旨で書いたのですが、実際には笑顔は笑顔でも中指を立てているかもしれません。とにかく、何らかの形で社会との融和を目指しつつ、自分たちの楽しみだけは絶対に譲らないという姿勢が必要だと思います。

社会から見てクラブは「不健全」な場ですが、「犯罪の温床」だとは限りません。たとえばオールナイトのイベントだけはIDチェックが必要というかたちで規制が残ってしまうとしても、それは仕方がないでしょう。それよりも現在の多くのクラブのような、小さな面積で深夜まで営業している店が、どうにかして現在の業態を保ちつつ合法に営業できる状態にできないかということを考えています。今のまま、クラブは非合法だけど黙認されている状態でも、僕のような客は音楽が流れているダンスフロアがどこかに存在していれば、そこで踊ることができます。そういう立場では今のままでもいいと言ってしまえるのですが、クラブを運営する側はそうはいきません。一度摘発されてしまえば、もうそのダンスフロアはなくなってしまうのです。