芸者東京エンターテインメント株式会社を退職しました
12月27日をもって、芸者東京エンターテインメント株式会社を退職しました。学生時代を含めて2年10ヶ月くらいお世話になりました。
会社でやっていたこと
最近は脳トレクエスト2というiOS/Android向けゲームのクライアント側を作っていました。ゲームエンジンはCocos2d-xで、それぞれのOSごとに実装しなければならないところを除いてほとんどのコードがC++でした。といってもCocos2d-xでゲームを作るのに必要なC++の知識はそこまで多くなくて、C++プログラマーを名乗るにはまだまだだなあという感じがします。ちなみにサーバー側はScalaですが、こっちは全くと言っていいほど触ってないです。
このゲームはいわゆる脳トレ的なミニゲームを解いて敵を攻撃しながら進んでいくRPGなのですが、僕が担当したのはアイテムを強化したりする部分やゲーム内で他のプレイヤーとコミュニケーションをとったりする、いわゆるゲームプログラマーの仕事としては想像されない部分のUIのコードでした。脳トレクエスト2を含め、この手のソーシャルゲームはアイテムの操作などの概念が複雑になりがちで、初見のプレイヤーにわかりやすくベテランのプレイヤーをイライラさせない導線を考える必要があって、そういうきちんとしたUIをGUIを構築するには貧弱なゲームエンジンの上に作るのはなかなかチャレンジングな課題だったと思います。また、イベントやAppStoreの審査などのスケジュールと調整しながらアプリをリリースしていくというのもゲーム会社ならではの経験ができたと思っています。
実は脳トレクエスト2にはずっと関わっていたわけではなくて、今年の春から秋にかけての半年くらいは別のプロジェクトで新規タイトルの開発に携わっていました。そこではUnityでプロトタイプを作っては改良点を模索するみたいなことをしていましたが、まだあまり人数を増やして開発するという段階にはないという結論に達して脳トレクエスト2のプロジェクトに戻りました。そっちでアウトプットが出せなかったことは残念でしたが、3Dオブジェクトをグリグリ動かしたりいろいろ実験的なプロトタイプを作ったりUI用のライブラリを作ったりとなかなか他では得難い価値のある経験ができたと思っています。
あとは、出社時間が遅めでよかったりアニメ観ながら仕事できたりするのがいい感じでしたね。アニメや声優の話を堂々とできるのもいい環境でした。
辞める理由
上述の新規プロジェクトで、面白くかつ商業的にも成功するようなアイデアが出せずに悩んでいる時に、ゲームのエンジニアとしての適性や、将来の生きていき方に関して強い疑念を抱いたのがきっかけでした。
もともと幼少期にあまりゲームを買い与えられて来なかったし、そのせいなのかゲームをやりたいと強く思うことがあまりありませんでした。自分たちが作っているものが面白くないとわかった時に、それをどうやったら面白くできるのかという場面で、そこに付け足す何かを探すための引き出しを自分は何も持っていないとその時強く感じました。
幼少期にはゲームをしなかった代わりに、おもちゃやガラクタを分解したり修理したりするのが好きな子供だったので、分解して仕組みを観察したり、間に合わせの適当な部品を組み込んで修理したりしていた原体験が、エンジニアの道に進むきっかけになったと思います。子供の頃に持っていた電池の入る道具のうち分解しなかったのは、確か三角形のネジを回せるドライバーが必要だったゲームボーイくらいだったと思うし、ミニ四駆も速く走らせるのにあんまり興味がなくて、コースアウトしてひっくり返っても逆さのまま走り続けられる車体を作ったりしていました。ものが動く仕組みを知ったり、性能を上げるよりも不可能だったことを可能にするのが楽しかったのだと思います。
コンピューターに強く興味を持つようになったのもその延長で、プログラミング始めたのもコンピューターの仕組みを知るためで、大学生になってからはWebサービスを作って公開したりもしていました。
芸者東京はまだ今ほどARという言葉が浸透していなかった頃にARフィギュアを作ったりしていて、その数年後に僕が初めてオフィスに行った時以降もゲームの枠にとらわれない野心的な構想をいろいろとしていました。しかし、芸者東京は野心的な会社である以前にゲームの会社で、社員の多くも僕とは違ってゲームをやりこんできた人たちでした。そして社員数が50人に満たない小さな会社では、与えられた仕事をただこなすのではなく、一人一人がゲームをより良くするための創意工夫をすることが求められました。
ゲームの面白さというのはいろいろな要素のバランスによって成り立つもので、頭がいいからといって面白いゲームが作れるというわけでもありませんでした。一般的にどうやって企画を作っていくのか他の会社の事例について知識がないのですが、周囲の社員の話を聞くかぎりでは過去の他のゲームの要素をしばしば参照しているようした。
上述したとおり、僕にはゲームに関する引き出しがまるで無く、僕にできることはただ他の人によって企画された機能を迅速かつ丁寧に作り込み、プレイヤーを必要以上に迷わせたりイライラさせたりしないよう洗練させていくことと、そして開発工程を滞らせることのないようコードの品質を上げて行くことだけでした。これに関して特に脳トレクエスト2のチームではそれなりの成果をあげたと思う一方で、これを5年10年と続けた時に、自分はどんなエンジニアになっているのだろうという疑問が生まれてきました。
僕はコンピューターサイエンスの専門家でもコンピューターグラフィックの専門家でもなく、情報系の資格があるわけでもなく、学位は環境情報学と政策・メディアという、得体が知れなくて胡散臭くも聞こえる学問で、UIデザインに興味があっておまけ程度にちょろっとコードが書けるという程度の人間で、要するにエンジニアとして中途半端で、この先生きのこるためにはもうちょっと専門分野みたいなものを身につけたいという思いがありました。このまま中途半端に人からもらった仕事のコードを書き続けていてはいけない、もっと積極的に開発の主体にならなければいけないと考えるようになりました。
もちろんゲームのエンジニアをしつつ古今東西の様々なゲームをプレイして引き出しを増やしていく道もあったとは思いますが、しかしそれはこの小さな会社でやっていくべきことなのかというところには疑問がありました。少なくとも自分はこの会社が作りたいものをゼロから作るにはいろいろと足りないものがあって、そこで時間をかけるか無理をするかしてできるようになるより、もともと自分が興味のあった、Webやスマートフォン向けのソフトウェア開発でスペシャリストを目指したいと思うようになりました。
あとは年齢の問題で、学部卒カードを使わなかったし新しい挑戦をするなら今だなと思ったのもあります。
そして、そういう相談を知人にしたりしているうちに、面白そうな会社を紹介していただき、是非ともと誘っていただけたので、今回退職する運びとなりました。これから行く会社についてはまたの機会に書きます。これはあくまで退職エントリーなので。
おしらせ
僕が退職ギリギリまで作っていたし微妙に終わらなかった脳トレクエスト2の新機能ですが、年明け以降のどこかのタイミングのイベントから有効になる予定です(AppStoreの申請が絡むのでどうしても時間がかかります)。芸者東京で最後にした仕事なので、このブログを読んでいる人にぜひプレイしていただきたいのですが、あいにくイベントがどうしても中〜上級者向けになってしまうので、イベントが始まってからアプリをダウンロードすると満足にお楽しみいただけないかもしれません。
しかし、なんとこのたび脳トレクエスト2のはじめての書籍が発売されて、しかもけっこういいアイテムが付いてくるらしいです。
値段は480円ですが、付録のアイテムは480円以上の価値がある(とあくまで僕個人は思っています)ので、お正月の暇な時にぜひお手にとってプレイしてみてください。今のところAmazonで取り扱われるかよくわからないですが、どうやらローソンには置かれるらしいです。1月1日発売とのことです。ついでに言えば付録のアイテムが役に立つのはちょっと進んだあたりなので、今すぐダウンロードして遊び始めるとこの本が出る頃にちょうどいい程度に進んでいるのではないでしょうか。
また、僕は退職しましたが、芸者東京エンターテインメント株式会社は現在ゲームが好きなエンジニア・デザイナー・学生エンジニアインターンの採用強化月間らしいです。採用のためにこれまでずっと放置されてきた公式Webサイトをついにリニューアルしたのでだいぶ本気みたいです。くわしくは採用ページをご覧ください。
参考までに楽しげな画像を貼っておきます。
ymrl先生が偲ばれている pic.twitter.com/bnAe53YoaI
— 小橋はこ@2日目東A-87a (@hako584) December 27, 2013